2020-01-01から1年間の記事一覧

芝生の庭

私は買い物をやめクレープが下りていった家の道に面しているところを探した。20メートルほどわが家の方に戻ったところに,その家に通じる道があった。ワンボックスカーなら二台は楽に通れるくらいの道幅だった。平坦なその道を三軒ほど進んだところの家の前…

ねこの日光浴とビタミン補給

視界から消えたクレープを思いつつも,私は主婦の仕事をこなしていった 。一軒家に住む私には,掃除をする割合が少し多いのだ。主婦の仕事はよく,炊事・洗濯・掃除と言われる。その大ざっぱな分け方には少々抵抗は感じるのだが,ここは大人になってその分類…

不眠症のねこの存在について

結局「ミケ」と書かれた首輪は外した。どこの誰が付けてたのか分からないものを付けているのは気持ちの良いものではなかった。それにクレープはあくまでもうちで飼っているねこなのだ。冗談じゃない!そう思った。たまに犬やねこに服を着せている人を見かけ…

はじまり

ある日のこと,ふと気づいたことがあった。何かが違う。いつも見慣れた彼女の姿ではなかった。その時すぐには気づかなかったのだが,彼女は確かにいつもと違っていた。 まるでどこかの雑誌の巻末にでもある間違い探しのようだった。右の耳はいつもと同じだし…

ねこの個性

ねこにもそれぞれ個性がある。まず,食べ物に現れる。一般的にねこは魚類が好きだと思われている。実際にキャットフードの種類を見ると,魚の味付けが多い。売れ筋はマ グロやカツオが入っているものらしい。中には「アジ味」といった,ちょっとふざけた名前…

はじめてのお出かけ

翌日の朝,ダンナはいつもの儀式をしに外に出て蟻の巣穴に近づいて行った。庭に続いている窓は開けっ放しだった。過ごしやすい季節だったので,私はダンナに何も言わなかったが,冬になっても同じようにしたら,ちゃんと窓を閉めるように言おうと思っていた…

クレープとダンナ

ダンナは帰宅するとすぐに部屋に行き,パジャマに着替えてから風呂に入る。それから食事をする。冬場は毎日ではないが,暑い時期は必ず風呂に入る。仕事から帰ると仕事 の続きのように,日々同じように行動する。 でも,この日は少し手順が違った。着替える…

わが家へようこそ

買い物を終え,駐輪場に停めてあった自転車に乗り,私は家に向かった。ゆっくり走りながら,あの三毛の子ねこは今どこにいるのだろうか,と考えた。季節はやがて梅雨を迎える頃で,まだそれほどねこにとって過ごしにくい時期ではなかった。昼間には汗ばむこ…

百日紅がお気に入り

木陰に身を置いていた三毛猫は,私が近づいても逃げる気配さえ見せなかった。私のことが視界に入っていないかのように,その場所にたたずんでいた。私が今までに飼ったねこの中で,もっとも小さなねこであることが見てすぐに分かった。小さいと言うよりは,…

クレープ

私にとっての五匹目のねこは二度目の雌ねこだ。三匹目に飼った,気の強い黒猫 -クロという単純なネーミングだった - が最初の雌ねこだった。彼女と私との相性はよくなかった。クロは私がまだ中学生から高校生の時分に我が家に住みついていた。私もこどもか…

ねこと蟻

結婚してからもねこを飼うことができたのは,ダンナの趣味が関係している。結果から言うと,私たちは最初から一軒家に住んだのだ。マンションでねこを飼うこともそう珍しいことではなくなったが,やはりまだまだマンションではペット禁止の方が多数派だ。結…

ささやかな楽しみ

ねこの生態を見るには,好奇心を持ってすればいくらでも試みることができる。簡単に試せることは瞳孔の開き,瞳の変化だ。その昔,忍者はねこの瞳を見て時刻を知ったという。ねこの瞳は光に応じて変化する。昼前はウソのように細くなり,これでほんうとに見…

演技するねこ

私が学校から帰ってしばらくの間,ぶちねこはここ数日そうしていたように,ちょっと痛そうに左足を引きずっていた。もともとは野生のねこだったくせに治りが悪いのだと思いながら,その引きずる足を見ていた。でも,同じ家に住んでいると同情心がはたらくの…

雨の日とねこ

初めて飼ったねこはまだらのぶちねこだった。まだ,私が小学校低学年の頃,我が家に住みついた。彼はどこの家にでも居るねこと同じように気まぐれだった。私が学校に行くときには家に居ないことが多かった。そろそろ梅雨時を迎える少し動くだけで汗ばむ季節…